◎ 良太郎を被っている。モモ良(ウラ)?チック(良&ウラ視点) ◎

電王TOPへ
眠っていると時々、ぬくもりを感じる。

夜、眠りにおちる一瞬、頭の中をいろんなことが駆け抜けていく。
桜井さんのこと、侑斗のこと、姉さんのこと、モモタロスたちのこと、ハナさん、時の運行、これから先に待っていること……。
頭の中で渦巻いて、苦しくなる。
僕は不安なんだと思う。でも、やるって決めた。
だからこの先に何が待ていても、僕は進む。
皆と一緒に。
良太郎。
誰かが僕を呼ぶ。
オヤスミ良太郎。
最初とは違う誰か。
語りかけてくる声に気持ちが楽になる。
その声を聞きながら僕は落ちるように眠る。

落ちるように……
「???」
いつもは落ちるように眠るのに、なぜか目が覚めた。
僕はベッドに寝ていた。
見覚えのない天井、体に伝わる振動。
横になったまま視線をめぐらせる。
照明が天井にうまっている。クリーム色の壁に、濃いモカブラウンのカーペット。足の方に木製のクローゼットと、出入り口らしいドアが見える。
見えるといえば、右手、僕の寝ているのとは逆の壁にもう一つベッドとクローゼットがある。
隣のベッドは誰か寝ている。頭の上まで掛け布団を掛けて、そこから手足をはみ出させている……。がたんといっそう大きく揺れる。弾みで布団が捲れて、眠っているのがモモタロスだってわかった。
ここは、デンライナーの中だ。
イマジンたちの部屋だ。
耳をすませてみると、人の気配はするけど周りは静まり返っていている。今は、夜中だろうか?でも、どうして僕が?
今日は店の手伝いをして、そのあと、食事して、風呂で、ウラタロスがくれたナイトローブをきてねた。

この前見たとき、良太郎、よれよれのパジャマ着てたから。たまにはこういうのも着ないと。きっと似合うからきてごらんよ。

フリースに手触りが似ていて病院の検査着に形の似ている生成のガウンだった。

起きてみる。ちょっと眩暈がした。
似合うからといわれたローブはちゃんと着ている。
どういうことだろう?僕が眠ったあとに誰かが憑いて僕をこまで連れてきた?とか?
……理由がない。
ベッドから降りて立ち上がると違和感を感じた。
何がおかしいのかわからなかった。体がものすごく重い。最初のころ、モモタロスに憑かれた後みたいだ。
モモタロスのベッドにいくのが精一杯で、立っていられなくて床にへたり込む。
そこで、違和感のわけがわかった。
髪の毛。顔に落ちかかる髪の毛がいつもよりも長い。
サイドの毛をいじっていると、右側から青い髪がでてきた。
これはウラタロスの???
確かめたくて鏡を探した。見える範囲に鏡はなくて、入口近くのクローゼットまで歩いていって勝手にあけた。
スーツが何着か下がっていた。そんなに広くもないそこはきっちり整理されていた。荷物の中に鏡を見つけて顔を見た。
「ウラタロス」
だった。
メガネをかけていないウラタロスがそこにいた。
一体どうなってるんだろう。
僕に憑依したウラタロスが僕に憑いたままデンライナーまでやってきて、寝てしまったんだろうか?
でも、いつもと感じが全然違う。
「……」
とにかく、戻ろう。
抜け出したベッドにもどって、布団の中で体を縮める。
とりあえず、寝よう。
あんまりそうは見えないけど、もしかしたらこれは夢かもしれない。

なんておもったのは、甘い考えで、いきなり布団を捲られれる。
「……」
モモタロスだ。
起き上がろうとした僕の首を掴んで布団に押し付ける。
痛い。
これは夢じゃない。
モモタロスは寝ぼけた目でこっちを見ている。
でも、口の端を上げて微笑んだ。
「え?」
首の手がはなれて両手で頬を掴まれる。
片手が目を覆って額と右目のしたと……鼻の下に……柔らかな感触が。
「あの……ちょっと」


「……」
そこで目が覚めた。
見慣れたいつもの天井。真っ暗な部屋。起き上がって鏡を見ると、いつもの僕にもどっていた。
「……ゆめ……?」
にしては、目や鼻の下に、あの生々しい感触が残っている。
「……」
僕は不安なだけじゃなくて、淋しいんだろうか?
誰かに、モモタロスにあんなふうにしてもらいたいと自分で気付かないうちに思ってるんだろうか????
胸に手を当てて考える。でも分からなかった。
「……寝よう」
なんか変な夢見そうだけど。
布団にもぐって目を瞑る。
今度は、すぐにあの、すうっと落ちるような感じがきた。

「この、バカ力……」
モモタロスをけりとばし、ウラタロスは呟いた。
手加減せずに放ったキックが綺麗に入り、半分寝ぼけたままのモモタロスは床にしずんでいる。
「うう」
うめいている。
「自業自得だよ」
呟き布団にもぐる。
目の下に唇の感触がしたから目が覚めた。
真っ暗な部屋に一人いた。
意識の尻尾を掴んだまま熟睡していまい、さっきまで自分と良太郎、二人分の体の感覚をもっていた。
良太郎が眠ったこちらの体を引きずるようにして動かしていたのも夢心地でみていた。
うかつだった。
良太郎にあげたローブ。あれのせいで今日はとくに良太郎とつながりやすい状態にあった。
「……うう……?」
呻きながら起き上がるモモタロス。
「……落ちたのか……」
「……」
その声にはこたえなかった。
僕は寝たふりをした。薄目を開けてみていると、モモタロスはよろけながら自分のベッドへ戻る。
横になって頭の下に組んだ腕を置いて、彼は天井を見ている。
自分の唇を指先で撫でながらはにかみ笑いをする。

いい夢見たな〜そんな顔をモモタロスはしていた。


電王TOPへ