◎ 愛情こめればおいしくおいしく(前フリ)侑斗視点 ◎

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「ふーん。ほんとにみんな人間の姿なんだな」
噂には聞いていた。
野上が雷に打たれてイマジンたちの姿が憑依状態のまま固定されていたこと。
「てめぇ……何しにきやがた」
机を叩き立ち上がる赤いの。
正しくはもと赤鬼、今は革ジャンを着て髪に赤いメッシュをいれたチンピラ風の男だ。
野上良太郎とは少し違う顔つき。でも親戚といわれれば納得できるくらいは似ている。
たしか名前はモモタロス。
モモタロスに一瞥をくれ眉間に皺を寄せる。
こうすると皆黙る。話を通しやすくなる。
「きたくてきたわけじゃないっ」
ストレートに感情を通す。
「なんだと」
モモタロスは鼻の穴を大きくして、目を細める。怒っている。メンチ切るから切り返す。
こういうのは目を逸らしたほうが負け。力を込めて睨み返す。
「まあまあセンパイ」
視線の交わるあたりにスーツ姿の「奴」が進みでる。
「侑斗も、落ち着きなよ」
くるっとその場で回る。髪に入った青いメッシュがその存在を誇るように閃く。
「またおでぶちゃんが家出でもしたの?」
「そんなんじゃない」
いいながらも、腰の引ける自分に気付く。
このイマジン、わけわかんねぇ。はっきりいってキモイ。
赤いのはいくら騒いでも無視してればいい。今はこの場にいない紫のもある程度は、黄色いのは考えなくていい、でも、この青いのの言動はこちらの神経を、細く裂くように逆なでする。
「でも、おでぶちゃんここにいるよ?」
「知ってる、デネブによばれてきたんだ」
「じゃあ、おでぶちゃんが良太郎と、リュウタとキンちゃんと四人で何してるのかも、もちろんしってるわけだ?」
「……」
デネブに呼ばれてきたんだ!!だから仕方なくきた、言おうと思ったが、代わりにふんと息を吐いた。
こいつは多分、知ってる。なぜかそんな予感がした。
野上良太郎にそっくりな顔。
それが、何かを面白がるように微笑みに染まる。上から下まで、まるで視線で撫でるようにこちらを見る。
まったく腹立たしい。一体なんなんだっメンチを切るが奴は益々嬉しそうな顔になる。
「はーいっコーヒーどうぞー」
デンライナーのアテンダントがコーヒーを運んでくる。
さあさあどうぞと、肩を押され、瞬く間に席に座らされる。
「おでぶちゃんに呼ばれてきたんでしょ?侑斗夕飯食べにこいって?」
「……」
ききながらもその目は答えを聞いてない目だ。だから、答えるのがしゃくでだまった。
「まぁいいけどね……そうういうところも……フフ」
「……」
何でここで笑うんだコイツ。
カップを口元まで持っていくが、コーヒーにはありえないものの混じった匂いが微かにした。

デネブがメールを打ってきた。

侑斗、今日は侑斗の好きな五目寿司に、茶碗蒸しに、てんぷらと柚子胡椒風味のあしたばのおひたしに、エビでだしをとったお吸い物だよ。しいたけは入ってません。野上に料理を教えてるからデンライナーにきて欲しい。今日はデンライナーで皆で夕食にしたいからね。必ずきてね。遅くなるなら迎えに行くから。

「……」
あれ……。あいつ、メールなんか打てたっけ?
「……」
青いのが笑ってる。
「ご名答!」
「おまえ……」
「”ウラタロス”」
僕はウラタロスだよ。青いのは笑顔を崩さない。
「オデブちゃんメールの打ち方分からないって言うから代わりに僕が打ったんだっ」
ふう……と、理性のくびきがゆるむのを感じた。
こんなのトコでカードを使うのは間違っている、思ったけれどその誘惑に乗りそうになった。
「あ、侑斗!」
のんびりとした声。
「デ〜ネ〜ブ」
「え?」
「おまえ、こんなところで何、和気藹々してんだよ」
「ええええだって、折角のチャンスだからこうやって皆で集まって夕食を」
「うっせ……おりゃーーー」
「あああああああ」


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